「『歌うクジラ(上)(下)』村上龍著 読了(2013年10月24日)」


まだKindleといった電子書籍もあまり一般的でないときにipad限定として電子書籍にて先行発売されたことで大きな話題を読んだ本である。ページをめくっていくとそれに合わせたBGM(坂本龍一担当!!)や画像が合わせて流れ、その小説の世界観を拡げようと試みた野心作らしい。

僕自身は電子媒体では小説は読んだことがないのでそれについて語ることは出来ない。興味はあるけれど、まだまだアナログな紙媒体が好きなのである。ということで、やっとこさ紙で文庫化されたので手にして読んでみた。

これは、村上龍の圧倒的な想像力によって描かれる今から百年後の暴力と虚無に支配された世界である。

正直な感想を言えば、ものすごい違和感と嫌悪感が混ざった複雑な感覚に導かれ、読後とても疲弊した。描かれる世界はわかりやすい言葉でいうと「エグい」というか、読みながら、ついていくのが精一杯だった。
助詞を崩した極めて読みにくい会話。あまりにも過激な描写と世界。 最近穏やかで静かな小説ばかり読んでいたので今の自分には刺激が強すぎた。

昔、同じような嫌悪感を感じたのが、他でもない村上龍の「限りなく透明に近いブルー」を読んだ時だった。その荒廃的な内容に、当時高校生だった僕は読み進めながら何度もその世界から目を背けたものだ。

それから二十年がたち、結構なジャンルと量の小説を読んできたつもりだが、まさか同じ作家に二十年前と同じ感覚を呼び起こされるとは思わなかった。こういうことは他の作家では経験したことがない。

村上龍は日本代表する作家だけれど、その理由を身体的に感じた(それが嫌悪感であっても)読書だったかなって思う。この小説が十年二十年を経てどういう評価をされるかはわからない。ただ、思うに村上龍の小説は、同時代に読むことにこそ強い意味があるのではないだろうか。(了)


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